今までマーマレードはトニー・マコウレイが担当した77年の『Falling Apart At The Seams』ばかり持ち上げていたが、今回のSequelの66~69年のCBS時代を集めた前者、69~72年のDecca時代を集めた後者の作品集で全貌を初めて聴くことが出来、その素晴らしさに、これまでの見方が間違っていたと気づかされてしまった。まったく勉強不足で申し訳ない。両者共、未発表曲まで含むコンプリート作品集で、さすがSequel。言い訳になるが、今まで出ていたマーマレードのこの時代のCDはベスト盤で、ヒットしなかったシングルやアルバム曲が入っていなかったのだが、実はそこにおいしい曲が詰まっていたのだ。個人的に好きなのは、やはり前者の『I See The Rain』。まず66年のデビュー・シングル「It's All Leading Up To Saturday Night Wait A Minutes Baby」、67年のセカンド「Can't Stop Now/There Ain't No Use In Hanging On」から既に魅力的だ。重量感のあるサウンドに、哀調を帯びたメロディ、そしてファルセットの見事なコーラスがからむ。この時代のマーマレードの中心はシンガー兼コンポーザーのJunior Campbellで、この2枚ではオリジナルはB面に回ったが、3枚目の「I See The Rain」からA面も担当する。この曲はエレクトリック・ギターが響くロック色の強いナンバーだが、そこにハーモニーがよくマッチした。B面の「Laughing Man」も同様で、ギター・ポップとしても秀逸だ。4枚目の「Man In A Shop/Cry」はどちらもストリングスをフィーチャーし、ポップ色をやや強くしている。ビートルズ風のギターと、ファルセットのコーラスが組合わさりこれも出来はとてもいい。しかしこれらの4枚のシングルが全てヒットしなかったため、以降外部ライターの曲を取り入れ大ヒットを連発していく。まずラブ・アフェアーを十分に意識したキャッチーなメロディと音圧のあるストリングスによる最高のポップ・チューン「Lovin' Things」で全英6位、続く同じ路線の「Wait For Me Mary-Anne」が30位にランキング、個人的には好きになれない「Ob-La-Di Ob-La-Da」の安っぽいカバーで1位、トニー・マコウレイの「Baby Make It Soon」を見事なコーラスで彩り9位と快進撃を続けた。2曲目のヒットの後急遽リリースしたアルバム『There's A Lot Of It About』は、カバーが多い散漫な出来だったが、その中でCampbellのオリジナルの「Mr. Lion」は光っていた。69年にビージーズの3人のペンによるジェントルな「Butterfly」をリリースするがヒットせず、Deccaへと移籍する。CBSでは「Otherwise It's Been A Perfect Day」「Clean Up Your Heart」という2曲の未発表曲が残されたが、文句の付けようのない素晴らしいコーラス・ワークでおクラ入りが惜しまれる出来だった。さてここからは後者の『Rainbow』へ移る。CD2枚組で1枚目はCampbellが在籍した時期のもの、2枚目はCampbellが脱退し、Huge Nicolsonが加入し、彼を中心に作られたものだ。サウンドはアコースティック・ギターを多く使ったクリアーなサウンドで、リード・ヴォーカルの歌い方も含めまさに70年代の音になっている。曲はもちろん大半がオリジナル。その中でキャッチーなフックを持つ「Reflection Of My Life」が3位、フォーク・タッチの「Rainbow」も3位、バラードの「My Little One」が15位とヒットは続いていった。71年の途中でNicholsonに代わり、今後が心配されたが、カントリーフレイバーを増した「Cousin Norman」を6位にランキングさせている。この時代もCampbell時代の延長とも言えるが、ヘヴィなギターをフィーチャーした曲もあり、変化を読み取ることができる。そして72年のシングルを最後にNicholsonが離れ、マーマレードの新譜は冒頭に書いたマコウレイに出会うまで4年間休止することになる。(佐野)
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