フォー・シーズンズの最も素晴らしい時期はと言われれば、今までは64年の『RAG DOLL』があまりにも良かったので「Dawn」のヒットも生まれたその64年と答えていた。しかしフランキー・ヴァリのフルレンジの美声が最も生き、持ち前のハーモニーが曲の流れによって自在に調和していた70年代前半のモータウン時代こそが、音楽的にフォー・シーズンズの最盛期だと今は変わっている。そしてこのCDはモータウン時代の3枚『Chameleon』『Inside Out』『Superstar Series Volume 4』の3枚のアルバムの収録曲を全て集めた(「The Night」のみ編集されたシングル・ヴァージョン)まさにベスト・オブ・ザ・ベストの内容だ。この内『Inside Out』はヴァリのソロとなっているが、曲によってグループ名義だったりヴァリ名義だったりあいまいだし、また作曲がボブ・ゴーディオ=ボブ・クリューで歌も明らかにグループという曲も多く、すべて同一に扱ってかまわないだろう。この時代の曲はヒットはなかったものの傑作揃いで、すべておすすめなのだが、その中でも1曲選べと言われれば「With My Eyes Wide Open」だ。パワフルなロック・ビートに乗った歌い出しが、エコーたっぷりのフーのような激しいブリッジに突入、ぐっとためを作ってサビの渦巻くコーラスの中で一気に解放される。これぞ私の理想のサウンド、理想のハーモニー、理想の曲だ。この曲は今年私が聴いた最高の曲であり、自信を持っておすすめする。この曲がシングルではなく『In side Out』の収録曲ということだけでも、そのレベルの高さがうかがえるだろう。こういった歌い出しにビートを聴かせ、サビでメロディアスに解放する曲は「Sun Country」「The Night」があり、みなシャープな出来栄えを示した。ソフトなバラードが歯切れのいいキャッチーなメロディに変わるのが「Hickory」。「A New Beginning」「When The Morning Comes」はミディアムに変わった後にまた美しいバラードへ戻るなど自在な展開を見せ る。重なりあうコーラス・ワークが聴きものの「How Come」、伸びやかで見事なハーモニーが楽しめる「Life And Breath」、ドラマティックなバラードの「Love Isn't Here」、徐々に盛り上がりを見せる「The Scalawag Song」、モータウンらしいダンサブルなビートに乗った「Just Look What You've Done」「Thank You」、そしてかつてのフォー・シーズンズのカウンター・コーラスを再現した「Walk On」と息をも付かせぬ素晴らしいナンバーが次々現れる。ヴァリの表情豊かなヴォーカルとそれぞれの曲を華麗に彩るハーモニーは完璧で、この時期のフォー・シーズンズこそ、史上最高のヴォーカル・グループと断言できる。(佐野)
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