トーケンズは決して "ライオンは寝ている" のグループではなく、キャッチーなメロディを書き、ファルセットを生かした洗練されたコーラス・ワークを聴かせてくれる優れたグループだと、私は事ある度にそう書いてきた。そしてそのトーケンズがソフト・ロックとしてもカテコライズされていくのが 67 年、ワーナーに移籍してからだ。そしてこの CD はそのワーナーでの唯一のアルバム「It's A Happening World」がベースになっている。アルバム自体ではやはりシングル・カットしてヒットしたタイトル曲と、バロック風のコーラスが素晴らしい "Portrait Of My Love" の 2 大名曲が光る。しかし驚かされるのがボーナス・トラックとして付けられた、アルバム未収録の全シングル・ナンバー 12 曲だ。この内 5 曲は B.T. Puppy より 95 年にリリースされた当時未発表で終わった名盤「Intercouse」に収録された曲で、そのクオリティの高さはお解りいただけるだろう。それ以外の曲でもキャッチーなメロディと素晴らしいハーモニーが映える "Till" や、ハプニングスとは違う解釈を見せる "Go Away Little Girl/Young Girl" など聴きどころは多い。ソフト・ロックからビートルズ風のナンバーや R&B ナンバーまでそのバラエティに富んだサウンドと、キャッチーなフックを必ず生み出す彼らの高い音楽センスは素晴らしい。まさに油に乗っていた旬の時代だった。そして 60 年代はシングルの時代であり、アルバムよりもシングルに優れた曲が集中する。アルバムとボーナスの曲数がほぼ半々というのは極めて変則的な選曲だが、さすが宮治さんはポップスの醍醐味が分かっている。アソシエイションと並んでこれも文句なしのリイシューだ。 (佐野)
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