1998年11月27日金曜日

☆Various : Sunshine Girl Polydor Soft Rock Collection (ポリドール/1683)

A&M,MGM,Deccaの音源からソフト・ロック・ナンバーを拾ったこのコンピレーション、カウシルズから "The Rain,The Parks And Other Things"  "We Can Fly" 、ホワイト・プレインズから "My Baby Loves Lovin'"  "In The Moment Of Madness" 、サンドパイパーズの "Beyond The Valley Of Dolls" など、いつものように VANDA のおさらいだけの内容であり、確かに内容はいいのだが、新発見がなく個人的にはまったく新鮮味のないコンピレーションだった。
他で既に CD 化されている曲がメインなので、ソフト・ロック・ファンなら触手を伸ばしづらいのが当然だが、この CD には「ソフト・ロックA To Z」でも散々書いたように、今回初のリイシューとなるルビー&ザ・ロマンティックスの "Hurting Each Other" という数あるソフト・ロック・ナンバーの中でも10指に入る大傑作が入っているので、この1曲のためだけに入手すべき。ヴァースがボサノヴァで、サビがドラマティックに展開するニック・デカロのアレンジが最高で、カーペンターズのヴァージョンよりはるかに出来がいい。(佐野)
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1998年11月21日土曜日

☆Billy Nicholls : Would You Believe (テイチク/20800)

ついにロックの残された数少ない幻の名盤が遂に初リリースされた。このアルバムは公式にはリリースされず、100枚だけのテスト盤のみが残され、現在の「Record Collector」のプライス・ガイドでは800ポンドという高額のプレミアが付けられたまさに「幻の名盤」なのである。日本のみの発売でまさに快挙。
ビリー・ニコルスは作曲家としてアンドリュー・オールダムに見いだされイミディエイトに採用、始めデル・シャノンの曲を書き、それはデル・シャノンの「A Complete Career Anthology(Raven/52)で現在もその3曲を聴くことが出来るが、「Would You Believe」と同じサウンドが既にここで作られていた。そしてニコルスはオールダムのプロデュースで、自らのソロ・アルバムの録音に取りかかった。オールダムはビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」に打ちのめされていて、このアルバムを「Pet Sounds」のイギリスからの回答と位置付けた。まずニコルズは数多い埋もれたイミディエイトのデモの中から "Would You Believe" を見つけ、スモール・フェイセスのスティーブ・マリオットとロニー・レーンが、プロデュースだけでなくバックにも全面的に参加して曲が完成した。キャッチーなメロディとメリハリのついたサウンド、そこにオールダムのアレンジしたストリングスなどが加わり、最後には迫力満点のマリオットのシャウト・ヴォーカルが被ってくる傑作である。その他の曲はニコルズが書き、ハープシコードとアコースティック・ギターを中心に、ストリングスや様々なパーカッションなどの装飾音で、ニコルスの美しいメロディの歌、ファルセットを駆使した厚いコーラスを包んだ。バッキングにはニッキー・ホプキンスやジョン・ポール・ジョーンズの凄腕が加わり、数千ポンドもの費用をかけたのに結局アルバムはリリースされなかった。その理由はいまだ不明のままだ。しかし「Pet Sounds」への回答という言葉を裏切らない素晴らしい出来だったのは、聴けばお分かりいただけるはずだ。この機会に絶対に入手すべきアルバムである。(佐野)



1998年11月16日月曜日

☆Foundations : 「Baby Now That I've Found You」 (Sequel/300)

トニー・マコウレイの作品の中でも優れた曲が多いのがファウンデーションズ。
しかしPyeでの2枚のアルバムはだいぶ前にRepertoireから CD 化されており、それぞれ多くのボーナス・トラックが含まれていたので未聴の音源は未発表曲だけかと思っていたが、この CD では未発表は1曲だけながら、存在すら分からなかった EP のみに収録されていた1曲に、Marble Archからリリースされていたアルバムのみに収録されていた4曲、さらに76年になってNew Foundationsの名前で1枚だけ出したシングルの2曲も入り、まさにコンプリートな作りになった。 CD 2枚組ながら値段が CD 1枚分のこの CD 、是非入手しておきたい1枚だ。New FoundationsのB面曲 "Something For My Baby" が、作家はUnknownとあるが、いかにもマコウレイが書きそうな爽快感のあるポップ・ナンバーで、お薦めはこれ。(佐野)

1998年11月6日金曜日

☆John Lennon : Anthology (東芝EMI/65002~5)


  この4枚組のアルバムは、ジョンとヨーコが暮らしたアスコットの邸宅、ニューヨークでの権力と抑圧との闘いの時代、ヨーコと別居し毎晩飲んだくれていた「失われた週末」、そしてヨーコと再開しダコタ・ハウスで主夫として暮らした平和な最後の時の4期に分けて、数多いジョンのデモを集約してある
なんとその数、93トラック!一番多いのはアルバム収録曲のデモや完成前の別テイクだが、シンプルな演奏でも曲は十分に魅力的だ。それにしてもジョンのヴォーカルはなんて存在感があるのだろう!どんなバッキングで「壁」を作っても、ジョンの声はいとも簡単にそれを壊して耳元へ生々しく現れる。こんなヴォーカリストはジョンしかいない。「Lost Lennon」のシリーズで馴染みのテイクが多いが、その中でもジョンとしての未発表曲が収録されたのは嬉しい。リンゴに書いた "I'm The Greatest"  "Goodnight Vienna" 、ニルソンに書いた "Mucho Mungo" のジョンのデモなど聴くとなにか旧友に久しぶりに会ったようで、嬉しくなってしまう。レア・トラックだったElastic Oz Bandの "Do The Oz" や「Roots」収録の "Be My Baby" も初めて CD 化された。ジョンの死後、ジョンのデモにポール、ジョージ、リンゴがオーバー・ダビングした "Real Love" の元のヴァージョンもある。そして個人的に私が最も気に入ったのが、ジョージ・マーティン・プロデュースの "Grow Old With Me" だ。ジョンのナンバーの中でも私にとって最も好きな一曲だが、カセットのみのホーム・レコーディングで録音状態が悪いのがずっと大きな問題だった。ジョージ・マーティンはこれにストリングスを加えて素晴らしいバラードに蘇らせた。異論はあるのは分かるが、私はビートルズ・ファン、この二人の組み合わせはそれだけで嬉しいし、それよりも曲の完成度という点で実に良く出来ていた。ジョンはこの曲を結婚式のスタンダードにと望んでいたという。そしてこのジョージ・マーティンのプロデュースのヴァージョンは、結婚式の場に相応しいものに仕上がったと思う。(佐野)


1998年11月1日日曜日

☆Free Design : Kites Are Fun(テイチク/TECW20796)☆ : You Could Be Born Again(テイチク/TECW20797)☆ : Heaven/Earth(テイチク/TECW20745)☆: Stars/Time/Bubbles/Love(テイチク/TECW20798)☆ : Sing For Very Important People(テイチク/TECW20746)☆ : One By One(テイチク/TECW20799)

 テイチクはフリー・デザインのプロジェクト3での6枚のアルバムをすべて CD でリリースすることになった。廃盤になったポリスターでは発売されなかった3枚目のアルバム「Heaven/Earth」と5枚目の「Sing For Very Important People」は7月に発売、残りの4枚は9月にアルバム未収録のシングル "Close Your Mouth/Christamas Is The Day" と "Kites Are Fun" のシングル・ヴァージョンも漏れ無く収録し、コレクターなら歓喜する仕様でリリースする予定。
数あるソフト・ロック・グループの中でも最も高度な音楽性を持ち、ロック、フォーク、クラシック、ジャズを融合したフリー・デザインのサウンドは時代を超越している。この CD 化で現在輸入盤店に出回っている音質の悪いスペイン盤のコンピレーション CD やクリスマス EP に手を出す必要はもうないので、楽しみに待とう。(佐野)
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