70年代のベスト・アーティストと言われれば、私が選ぶのはニール・セダカ。美しく、芳醇なメロディ・ライン、ハイ・トーンで多彩な表情を見せるヴォーカル、60年代の大成功から一度底辺を見て再び花開いた彼はまさにプロ中のプロ・ミュージシャンだ。そしてこのリイシューはロケット時代の3枚のアルバムに各4曲のボーナス・トラックを加えたものである。
ロケットは70年代のニールの中でも最も多くのヒットを生んだ黄金時代だった。まず「Sedaka's Back」は「Solitaire」「The Tra-La Day's Are Over」「Laughter In The
Rain」の3枚のアルバムから選曲したアルバムだ。アメリカでヒットがないため後者2枚のアルバムはイギリスのみのリリースで、 "Laughter In The Rain" が全米1位に輝いたことからニールの熱烈なファンであるエルトン・ジョンが自分のレーベルのロケットにニールを引っ張り、過去の作品からチョイスしてこのアルバムを作った。10CCのバッキングが爽快感を醸し出した "That's When The
Music Takes Me" "Little Brother" 、名曲 "Laughter In The Rain" 、美しいメロディを持つ "Immigrant" "Solitaire" など聴きどころは十分。ボーナス・トラックにはニールのナンバーの中でも最もソフト・ロックとしての魅力を発揮した流麗な「Laughter~」収録の "Endlessly" という名曲中の名曲が収められたのが嬉しい。もの憂げなムードたっぷりの「The Tra-La~」収録の "Alone In The New York
In The Rain" の選曲もいい。次にアルバムとして最も高い完成度を誇るのが「The
Hungry Years」だ。メロディ・メーカーとしての才能を十分に発揮した "New York
City Blues" "Your Favorite Entertainer" "The
Hungry Years" "Tit For Tat" の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。忘れがちなのがピアニストとしてのニールの才能で、これらの曲のバッキングのピアノも実に素晴らしいので注目して欲しい。ボーナス・トラックには娘のデラ・セダカの書いたB面曲の中から1曲と、このアルバムの英盤にあたる「Overnight Success」のみ収められていた2曲などが収められた。もう1枚は「Steppin'
Out」だ。このアルバムにも "Bad And Beautiful"
"Perfect Strangers" という最高のナンバーが収められ、エキゾチックな "Summer Nights" "Here We Are Falling In Love
Again" など魅力的なナンバーがギッシリと詰まっていた。ボーナス・トラックは
"Love In The Shadow" のB面収録の "Don't Let
It Mess Your Mind" 、これは「Solitaire」の収録曲のリメイクで、サントラのような華麗なオーケストレーションによってさらに魅力的な仕上がりになった。そして "Time Waits For No One" は嬉しい未発表曲で、ゴスペル・タッチの佳曲だ。(佐野)
0 件のコメント:
コメントを投稿