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1997年11月26日水曜日

☆Montanas : You've Got To Be Loved (Sequel/994)

モンタナスはイギリスのグループで、65-70年の間にPiccadellyPyeMCAで9枚のシングルをリリースしたのみでアルバムのリリースはなく、ヒットも "You've Got To Be Loved" がイギリスのレコードワールドで39位、アメリカのビルボードで58位にランクされたのみだ。しかしMCAのシングル1枚以外の全音源を集めた本 CD を聴くと内容のいい曲を数多く作り出していたことが分かる。
デビューの "All That Is Mine Can Be Yours" はマージー系、セカンドの "That's When Happiness Begun" はR&B調でいまひとつあか抜けないサウンドだったが、トニー・ハッチがプロデューサーになったサード・シングル "Ciao Baby" から一気に洗練されたサウンドに変貌した。ハイトーンのヴォーカルにコーラスがからみ、アコースティック・ギターのストロークをベースに生かしながらビートの効いたサウンドを響かせる。メロディもキャッチーだったが、同時期に大ヒットしたフォーチュンズの "You've Got Your Troubles" に似ていたのが失敗だった。続く "Take My Hand" はアドリシ兄弟の書いたキャッチーなこれぞヒット・チューンという快作だが、これもなぜかヒットせず。驚いたのは、この曲はミレニウムのリー・マロリーがカート・ベッチャーのプロデュースでリリースしたセカンド・シングルと同じ曲だったのだ。両者を比べるとハッチのプロデュースの方がサウンドもクリアーだし出来がいい。2枚連続ヒットしなかったので、ついに御大トニー・ハッチが自作を提供した。それが "You've Got To Be Loved" である。流麗なメロディと聴かせどころに配される心引かれるフレーズはさすがハッチとしかいいようがない。続く "A Step In The Right Direction" もハッチ作だが、エキゾチックなメロディはいいが少々アダルトなサウンド過ぎてヒットせず。それよりもB面に多く配されているメンバーのオリジナル曲の "Someday" が明るいポップ・チューンでこちらはなかなかいい。さらに7枚目のシングルの "You're Making A Big Mistake/Run To Me" はどちらもハッチが書いた。A面は出だしのメロディはいいのだが、詰めが少々甘い。それよりB面の方がトニー・ハッチらしいポップさが出ている。ここでハッチが離れ8枚目のシングルはオリジナルの "Roundabout" で勝負したが、出来は悪くはないがやはり質の低下は否めなかった。17曲目以降は未完成のアルバム用の未発表トラックが10曲続くが、どれも出来はなかなかいい。その中でも驚いたのがロジャー・ニコルスの "Let's Ride" だ。あの爽やかさを少しも壊していない素晴らしいカバーで、ロジャー・ニコルス・ファンはこの1曲のためだけでも買う価値がある。97年のベスト・リイシューの1枚と自信を持ってお薦めしたい。(佐野)
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1997年11月21日金曜日

Beach Boys情報:「The Pet Sounds Sessions」、「Essential : The Beach Boys Perfect Harmony」、「Shut Down」etc

The Pet Sounds SessionsBoxのDATを私が東芝EMIの試聴室で聴いたのはもう今から1年9カ月も前のことになる。そしてリリース予定の96年6月からようやく1年5カ月を経て待望のリリースとなった。
内容についてはキリがないので詳細には記述しない。日本盤には140Pものブックレットの対訳が付き、メンバーや他の著名なミュージシャンのコメントが読めるのでそれで十分だ。本誌の読者なら黙って買うこと。ロック史上最高のアルバムを、制作の試行錯誤のヴァージョン(間奏がサックスの "God Only Knows" 、リードがマイクの "I'm Waiting For The Day" 、ブライアンやカールがリードを取る "Sloop John B" などがある)から、あまりの美しさに息を飲む全曲ヴォーカル・パートのみの「Stack-O-Vocals」、ブライアンの細かい指示も生々しいバッキング・セッションの風景など、徹底的に楽しめるファンならずとも感涙の1枚だ。長く待ち望まれた「Pet Sounds」のトゥルー・ステレオも初めて収録されている。全てのリイシュー盤の中でも、97年の最大の収穫であることは間違いない。そしてEMIの100周年記念として、アメリカのEMI?キャピトルより、「Essential : The Beach Boys Perfect Harmony(EMI-Capitol/72438-21277)がリリースされた。紙パッケージを組み合わせた非常に凝った作りの CD で、内容的にはキャピトル時代の15曲のコンピ盤。その中でちょっと面白い2ヴァージョンがある。 "Vocal Up Version" と題された "Hushabye"  "When I Grow Up" の2曲だ。ヴォーカルをぐっと大きくしたミックスなのだが、ビーチ・ボーイズのコーラスの粋をこらしたこの2曲を選んだセンスが素晴らしい。限定盤なのでコレクターの方はお忘れなく。日本の東芝EMIよりはキャピトル時代の全オリジナル・アルバムなど20枚がリイシューされた。あの2イン1ではないので、残念ながらボーナス・トラックはない。ただ、コンピ盤の「Shut Down」は初リイシュー、冒頭にエキゾーストノートが被るミックスの「Shut Down」はこの盤でしか聴けない。ビーチ・ボーイズではないが、ブライアン・ウィルソンの二人の娘カーニーとウェンディのデュオにブライアン自身も協力したウィルソンズのアルバムがリリースされた。その「The Wilsons(マーキュリー/1550)は、ブライアンが作曲で "Miracle"  "Everythig I Need" (後者の共作はトニー・アッシャー)に参加、ヴォーカルではこの2曲の他、自身の "'Til I Die" 、そしてなんとキャロル・キングが作曲に加わった "Monday Without You" の4曲に参加している。サウンド的にはウィルソン・フィリップスの延長だが、ブライアンが参加した曲はポップな舌触りがあり楽しめる。特にアルバムのベスト・トラックでもある "Monday Without You" は、軽快なサウンドに3人のコーラスがからみあい最高の出来。日本盤はボーナスで1曲多いのでこちらの方が得だ。(佐野)
 



1997年11月18日火曜日

☆Zombies : Zombie Heaven (Big Beat/ZOMBOX7)

 待望久しいゾンビーズの CD 4枚組ボックスが遂にリリースされた。今まで発表されたすべての音源を含む全119曲が収録され、1曲ごとの各メンバーのコメントやディスコグラフィーまで完備した68Pものブックレットがついた、まさにパーフェクトな内容のボックス・セットである。
ディスク1、2は既発表のスタジオ音源を集めたものだが、 "Tell Her Know" やアルバム「Odessey & Oracle」の曲を聴くと、ゾンビーズのサウンドがいかにモダンであったか改めて驚かされるだろう。ロッド・アージェントとクリス・ホワイトの作る美しいメロディに、ジャズのエッセンスも加わった洒落たサウンド。ポイントはアージェントのキーボードだ。そこにコリン・ブランストーンの魅惑のヴォーカルが入るのだから、これはたまらない。ブリティッシュ・ポップの最良のサウンドがこのゾンビーズといって間違いない。このスタジオ音源はオリジナル・モノ・モックスで収められたため、 "She's Not There" は驚くほどドラムが大きいし、 "Is This The Dream" に至ってはそれまでの馴染みのステレオ・ミックスとは違って "Hey Hey Hey" のコーラスがカウンターで入りビックリさせられた。ディスク3はデモ集で、既発表の曲のプロト・タイプの曲や、未発表の曲まで楽しめる。ディスク4は BBC でオン・エアーされたスタジオ・ライブ集。過去「Five Live Zombies」のタイトルでが6割程度がまとめられていたが、ここでは計10回の出演の音源がすべて収められ、10曲が追加された。その中にはキャロル・キング作の "Will You Love Me Tomorrow" やバート・バカラック作の "The Look Of Love" が登場し、ゾンビーズのポップ・フリークぶりが伺えて楽しい。ゾンビーズは既にテディ・ランダッツォ作の "Goin' Out Of My Head" やホランド=ドジャ?=ホランドの作品が多くあり、カバー・センスの良さにも注目だ。とにかくこのボックスは買う以外ない。日本盤はVivid Soundから出ている(VSCD1427~30)が、膨大な解説を対訳した分厚いブックレットが付いているので、少々高いがこちらをお勧めする。(佐野)
Zombie Heaven
 



1997年11月6日木曜日

☆Simon & Garfunkel : Old Friends(Sony/8490)

以前 "Bridge Over Troubled Water" のデモなども含まれたポール・サイモンのボックス・セットがリリースされたが、サイモン&ガーファンクルのボックス・セットはこれが初。なぜか日本のロック評論家には軽視されるS&Gだが、そういう連中は「ポップだから」「売れ過ぎたから」というあたりにこだわって、いい音楽というものが分からないのだからかわいそう。
さてこのボックスは彼らの偉業を味わうのに十分な内容だが、我々コレクターにとって嬉しいのは数多くの未発表トラックだ。 "Bleecker Street" のデモ、65年の「Sounds Of Silence」のアウトテイク "Blues Run The Game" 67年のライブ "A Poem On The Underground Wall"  "Red Rubber Ball"  "Blessed"  "Anji"  "A Church Is Burning" 67年録音したクリスマス曲 "Comfort And Joy"  "Star Carol" 68年のライブ "Overs"  "A Most Peculiar Man"  "Bye Bye Love" 69年のデモ "Feuilles-O" 69年のライブ "Hey,Schoolgirl/Black Slacks"  "That Silver Haired Daddy Of Mine" に加え、今まで一度もアルバム収録されなかった "You Don't Know Where Your Intrest Lies" ( "Fakin' It" のB面)も収録された。デモと未発表曲はどれもアコースティック・ギターのみのバッキングのシンプルなもので、ライブも同様の2人だけのレコーディングなので、内容的に驚かされるようなクオリティの音源はない。ただ、サークルで知られる "Red Rubber Ball" やトム&ジェリー時代の "Hey Schoolgirl" のライブなんて嬉しいではないか。それにしてもポール・サイモンの曲は、アート・ガーファンクルの透明感のあるハイトーンの声によって最も映えるなあと改めて感じた。
(佐野)
Old Friends [Box]

1997年11月1日土曜日

☆Four Seasons : Edizione D'Oro (Ace/642)



Aceのフォー・シーズンズのVee-JayPhilips時代のリイシューは、2イン1で完璧に進みもう終わりと誰もが思っていたのに、ついに68年にリリースされたコレクターズ・アイテムとなっていたこのベスト盤までも CD 化された。このアルバムの価値はもう別ヴァージョン集とも名付けたいミックス違いのオンパレードにあり、特にイントロのスロー・パートがなく "Dawn" のコーラスから始まる名曲 "Dawn" は驚くほど違うし、頭からコーラスが被る "Girl Come Running" も印象がかなり異なる。その他 "Ain't That A Shame"  "Save It For Me"  "Let's Hang On" のステレオ別ミックスも注目で、 "Let's~" はアナログでカットされていた冒頭のスロー・パートを編集で復活させていた。そして解説書だが、1曲ごとヴァージョンの違いも含めて表になるなど、マニア心を満足させてくれる。このAceを始めとする海外のリイシュー・メーカーの徹底的なリイシュー計画を目の当たりに見るにつけ、カタログがあるのにつまみ食い程度に出さない中途半端な日本のレコード会社の担当は爪の垢を煎じて飲んでもらいたいものだ。(佐野)
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☆Small Faces:The Definitive Anthology Of The Small Faces(Repertoire/REP4429)



スモール・フェイセス・ファンにとってまさに究極のコレクションが登場した。ディスク1はシングルのAB面を順に集めて行ったもの。スモール・フェイセスはB面に気合の入ったR&B系ロックナンバーが集中、「It’s Too Late」「Understanding」「I Can't Dance With You」「E Too D」「Wham Bam Thank You Mom」なんて明らかにA面よりはるかにカッコ良く、ヘヴィ・ローテーションになってしまう。ディスク2は夢のコレクション。まずはスティーヴ・マリオットがソロとしてデビューした時のシングルでA面の「Give Her My Regards」はまさにバディ・ホリー。そしてついに聴くのを夢にみていたMomentsのシングル「You Really Got Me」の登場だ。あのキンクスの名曲をマリオットのヴォーカルなら…とワクワクして聴いたが、リフの後は粘着質の歌い回しでこれってマリオット?って感じ。間奏はハーモニカだし、期待したほどではなかった。B面の「Money Money」はシンプルなR&B。そして続いてスモール・フェイセスをクビになったジミー・ウィンストンが1996年にJimmy Winston & His ReflectionsWinston’s Fumbs名義で出したシングル24曲も収録された。このシングルもウルトラ・レアで嬉しい収録だが、スモール・フェイセスのナンバーである「Sorry She’s Mine」以外は、なんともパっとしないR&B系ナンバーでこりゃダメだとすぐ分かるだろう。それにしてもこのディスク2のシングル4枚は絶対入手しておくべきレア・ナンバーのため、そのためだけにも購入しておこう。(佐野)
Definitive Anthology