ユニヴァーサル・ビクターは前のMCAビクターで、MCA、Uni、Kapp、ABC、Dot、Dunhillといったレーベルを持っていて、ことソフト・ロック系では豊富な音源を抱えていた。そして今回オリジナル・タイトル8枚、コンピレーション2枚がまとまってリイシューされたのはまことに喜ばしい。
まずその8枚だが、目玉はEighth Dayの「On」(MVCE/22014)。本誌と本誌が編集した「ソフト・ロックA to Z」以外外国を含めて何の記述もされていない超マイナー・グループだが、セッション・ヴォーカリストとして知られるロン・ダンテが全面的に作曲・プロデュースを担当し、爽やかなハーモニーと軽快なメロディに彩られた傑作に仕上げていた。こうしてリイシューされると、紹介したかいがあるというもの。そしてメンバーにロブ・ロイヤー、プロデュースにデビッド・ゲイツというブレッドの原型ともいうべきPleasure Fairの唯一のアルバム「The Pleasure Fair」(MVCE/22013)にはシングルのみの2曲がプラスされた。ボーナスの2曲の出来はそこそこだが、貴重だ。ちなみにこの2枚の解説は本誌の江村氏。先のロン・ダンテがリード・ヴォーカルを取ったポール・ヴァンス=リー・ポクリスのポップなプロジェクト、Cuff Linksの「Cuff Links」(MVCE/22011)と、 "Younger Girl" のヒットなどで既に有名なフォーク・ロック・グループ、Crittersの「Younger Girl」(MVCE/22012)は、それぞれCastleとTragonからリイシュー済みのアルバムなのでお持ちの方も多いはず。ただ前者はシングル曲
"Run Sally Run" (2ndアルバム収録曲)がプラスされ、後者はシングル曲8曲がプラスされたのはTragonとまったく同じだが、Tragonがわざわざ "He'll Make You Cry" についてはシングル・ヴァージョンを収録したのに比べ、こちらはサウンドの薄いアルバム・ヴァージョンをそのまま収録したので、ここのみ違いが生まれている。そしてポップ・サイケに移行したためサイケ・ファンからは冷遇されていたのだが、ソフト・ロックとしての視点で再評価したところ注目度が高まったStrawberry Alarm Clockは、オリジナルの1st?4thの4枚、「Incence And Peppermints」(MVCE/22007)、「Wake Up...It's Tomorrow」(MVCE/22008)、「The World In A Sea Shell」(MVCE/22009)、「Good Morning Starshine」(MVCE/22010)が一気にリイシューされた。特に3枚目はソフト・ロック・ファンにお薦めだが、サイケ、ソフト・ロック、どちらのフィールドで聴いてもチープな感覚があるのがこのグループの特徴と言えば特徴だ。あとの2枚はコンピレーション、「Melodies For You」(MVCE/22005)、「Morning Glory Days」(MVCE/22006)、内容的には両方で全46曲中37曲が「ソフト・ロックA to
Z」などで本誌が紹介したものばかりで、個人的には1曲を除いて目新しいものはなかった。Sundownersの "Always You" (こちらはVenese~と違ってアルバム・ヴァージョン) "Edge Of Love" やFun & Games、Orange Colored Sky、Peppermint Rainbow、Twinn Connexion、Thee Prophets、さらにTommy Roe、Mama Cass、Brian
Hyland、American Breedなども入れてしまう選び方は本誌とまったく同じ。高名な選者による新しい「発見」を期待したのに、前述のVenese Sarabandeのシリーズと同じで我々の「おさらい」をしてくれただけであまりに芸がない。ただし、一般的には前から本誌がお薦めしているアーティストばかりなので出来はいい。Fun & Gamesのようにアルバムの中からの選曲をもう少し考えてもらいたかったアーティストもいる。収穫はSalt Water TaffyのRod McBrienがSalt?の前にPebbles & Shellsの名前でリリースした自作のシングル "Let's Be More Than Friends Tonight" 、流麗なメロディと心地良いハーモニーの傑作で、さすがRod McBrienと嬉しくなってしまった。(佐野)
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