1996年8月28日水曜日

ビーチ・ボーイズ情報コーナー(未だ発売されぬ「Pet Sounds Sessions Box」を含め大量紹介あり)

 VANDA 20号で紹介した「Pet Sounds Sessions Box」だが、残念ながら未だ未定のまま。ブライアン以外の各メンバーが自分の存在も目立つようにと勝手なことを言っているのが真相のようだが、まだ予定はたっていない。その中、アメリカのキャピトルでサンプル用に作られた CD 「The Pet Sounds Sessions」(Capitol/DPRO11241) が日本の一部のレコード店に (私の知っている範囲では大阪のForeverだけ) 少数流れ、運よく入手することが出来た。
ここには初のトゥルー・ステレオでアルバム全曲と、 "Wouldn't It Be Nice"  "I Just Wasn't Made For These Times" のヴォーカル・オンリー、間奏がサックスの "God Only Knows" 、オリジナル・スピードの "Caroline No" などが収められ、サンプルとしてボックスのハイライト部分を見事に切り取っていた。一日も早い正規リリースを祈るのみだ。続いてあの「Television's Greatest Hits Voleme4」(TVT/1600)に遂に "Karen" (64年)が収録された。今まではブートでしか聴けなかったが、音質が格段にアップ、フェイド・アウトせずに完奏しているのが嬉しい。アップテンポの爽やかなTVテーマ・ソングである。ライノの4枚組 CD ボックス「Cowabunga!The Surf Box」(Rhino/R2-72418)に63年10月のハリウッド・ボウルのコンサート会場でのライブ "KFWB Jingles" が収録されている。地元のFM局のジングルを10秒ほどアカペラで歌っただけだが、我々ビーチ・ボーイズ・ファンは見逃せない。ボックス自体の内容はRhinoなので文句なし。そうそう、ビーチ・ボーイズの新譜として、「Stars And Stripes Vol.1」(River North/51416-1205)がリリースされていた。これは往年のビーチ・ボーイズのナンバーをカントリー・シンガー達がリードを取り、ビーチ・ボーイズがバック・コーラスをしたもので、この組み合わせでのナッシュヴィルでのコンサートが人気だったのでスタジオ録音化したのだそうだ。安易な企画にまったく工夫のないアレンジ、こんなのを出されるとファンとしてはただもうガッカリ。マイク・ラブ主導で作られたものだが、ブライアンもプロデューサーとしてクレジットされており、現在のビーチ・ボーイズには過度の幻想を抱いていてはダメなようだ。ビーチ・ボーイズがコーラスを担当したのがJeff Foxworthyなる人物のアルバム「Crank It Up」(Warner Bros./46361)収録の "Howdy From Maui" 。この人物おそらくコメディアンで、自分自身は歌わずゲストが歌い、自分は全て語り。インスト部分で "Wipe Out" や "Diamond Head" のフレーズもちりばめたサーフィン・スタイルのこの曲のブリッジのコーラスをビーチ・ボーイズが歌っている。珍しい曲が入っている訳ではないが、東芝EMIより12月にリリースされた2枚組の「The Best Of The Beach Boys」(東芝EMI/50107)はビギナーに最適のベスト盤になった。というのもキャピトルだけではなくワーナー、カリブ時代まで含んだベストだからだ。ブルース・ジョンストンの "Disney Girls"  "Tears In The Morning" 、デニス・ウィルソンの名曲 "Forever" からアル・ジャーディンの "Lady Lynda" まで各メンバーの書いた最高傑作が入り、 "Surf's Up" や "Cottonfields" と、この選曲には私のようなコアなファンまで嬉しくなってしまうほどである。2枚組という入門用ベスト盤としては、間違いなく今までで最高の内容だ。
 ソロ関係のリイシューではブライアン・ウィルソンの「I Just Wasn't For Made These Times」からのカット "Do It Again" の CD シングル(MCA/33370)には "This Song Wants To Sleep With You Tonight" というブライアンとアンディ・ペレイの共作によるまったくの新曲が収められていた。プロデュースがドン・ウォズ&ブライアンなので、この当時の録音なのだが、セルフ・カバー以外にこうした新曲も録音していたとなると、まだまだ他に多くが隠れていそうだ。「Brian Wilson」以来続くサウンドとメロディの佳曲で、この気品はブライアン抜きのビーチ・ボーイズの作品ではなかなか感じられないものだ。元ゴーゴーズのベリンダ・カーライルの「A Woman & A Man」(東芝EMI/50002)収録の "California" ではブライアンがバック・コーラスを担当、ロサンゼルス大地震の暗い内容の歌に、的確なコーラスをつけていた。別テイクやカラオケなど未発表の音源が数多く入ったジャン&ディーンの2枚組ベスト「All The Hits-From Surf City To Drag City」(EMI/8-53730-2)収録の "When Summer Comes" はブライアンとジャンが書いた "The New Girl In School" (元は "Gonna Hustle You" )の歌詞が違うヴァージョンで、今回が初登場。デビッド・キャシディのベストもの「When I'm A Rock'n' Roll Star.The David Cassidy Collection」(Razor & Tie/2117)にデビッドとブライアン・ウィルソンの共作 "Cruise To Harlem" が収録された。凡庸なロック・ナンバーなので、コレクティングをしている人向け。しかしこの CD 、デビッドとブルース・ジョンストンが共同プロデュースした75年の「The Higher They Climb,The Harder They Fall」と、76年の「Home Is There The Heart Is」から中心にセレクションしており、 "Darlin'" や "I Write The Songs" も入っているので、好みはあるものの、持っていたい1枚だ。さらに枝葉末節なものだが、リジェンダリー・マスクド・サーファーズのクレジットでリリースされた「Jan & Dean's Golden Summer Days」(Varese Sarabande/5727)に収録された "Sidewalk Surfin'" は、マイク・ラブとディーン・トーレンスのデュオ。グループ名を見ると期待してしまうが、かつてジャン&ディーンの名義で出したリレコものの単なるリイシューなのでだまされないように。 "Vegetables" のクレジットにブライアンの名前があるが、これはかつてのジャン&ディーンのテイクをそのまま入れただけなので、これも「引っかけ」だ。(佐野)
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1996年8月27日火曜日

☆Tony Burrows : The Voice Of Tony Burrows (Varese Sarabande/5725)

信じられない!の一言を本 CD に送りたい。
というのもかつて本誌13号で取り上げたトニー・バロウズの歌った曲だけを集めたコンピレーションが本当に出てしまったからだ。なにしろトニー・バロウズはセッション・ヴォーカリストであり、歌った曲はヒットしても本人の名前で出したシングルではほとんどヒットせず、一般的にはほぼ無名に近いヴォーカリストだったからだ。
本誌の特集以降、レコード店での CD のキャプションにこの「トニー・バロウズ」の名前を見るようになったが、ソフト・ロックなどというムーブメントもないアメリカで、このようなコンピが出るとは...。そういえばこの会社の社長は「Melodies Goes On」のシリーズの大ファンだったそうで、日本からの影響と言う事も考えられる。さて、この CD の収録曲で驚かされたのはまずエジソン・ライトハウスのスウェーデン・オンリーのアルバム「Already(Bell/92556)にあの "Baby Take Me In Your Arms" が入っていたという事だ。それもトニー・マコウレイのプロデュースだ。ビートに乗って出来はいいが、これはサウンドにヴォリュームがあるジェファーソンの勝ち。また当時の日本盤のベスト・アルバム「Greatest Hits」に入っていた詳細不明の "In The Bad Bad Old Days" (Bell/45116)が実はトニー・バロウズのソロ名義のシングルという事も分かった。つまり総合してみるとこの日本盤のベストのみに収録されていた "Home Lovin' Man" や完全なソロの "United We Stand" を含め、これらはトニー・マコウレイのもとで製作され結局ボツになったトニー・バロウズの幻のソロ・アルバム用の曲だったのだろう。元々実態のないエジソン・ライトハウスのコンピに都合よくこれらの音源が使われたのではないか。この他では74年のTouch名義のシングル、75年のDomino名義のシングル、76年のトニー・バロウズ名義とMagic Featuring Tony Burrows名義のシングルが初登場、この内頭から3枚はアーノルド=マーティン=モローの作品なのも興味深い。どれもいい曲なのだが、ややキャッチーさに欠け、みなヒットにはなっていない。(佐野)
 



☆Bubblegum Classics Volume 3(Varese Sarabande/5719)☆Soulful Pop(Varese Sarabande/5718)

今最も注目すべきリシュー・レーベルはなんといってもこのヴァレッセ・サラバンデである。先のトニー・バロウズといい、最も日本的なソフト・ロックの傾向を分かっているレーベルだからだ。まず、好評の「バブルガム・クラシックス」のシリーズ第3弾だが、ついにソルト・ウォーター・タフィーの "Finders Keepers" が収められた。またカウシルズの "We Can Fly" も。かつて「Melodies Goes On」のシリーズで選曲したものばかりだ。そしてファン&ゲームス、クリークなどバブルガムに近い線の曲を選んでいるものの、ソフト・ロック系のアーティストを選んでくる。また新しいコンピ「ソウルフル・ポップ」ではトニー・マコウレイ作/プロデュースの曲を4曲選び、その内ジョニー・ジョンソン&ザ・バンドワゴンの "Blame It On The Pony Express" は、音楽之友社の「ソフト・ロック」のトニー・マコウレイ・インタビューの中で、エジソン・ライトハウスの "Love Grows" と同傾向の曲として引き合いに出しているので要チェックだ。この曲とファンタスティックスの "Something Old,Something New" はマコウレイ作の全英トップ10ヒットなので、お手元のリストに書き加えて欲しい。他にもラブ・アフェアー、ジェイ&ザ・テクニクス、ファウンデーションズとこれもまた「ソフト・ロック」の中で取り上げたアーティストばかり。うーむ、さすがだ。(佐野)


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1996年8月20日火曜日

☆Rip Chords : Hey Little Cobra(Sundazed/6098)☆Rip Chords : Three Window Coupe(Sundazed/6099)

ヴァレッセ・サラバンデと並んで最注目のサンデイズド、遂にリップ・コーズをほぼコンプリートにリイシューしてくれた。VANDAの読者の方ならもう言うまでもないが、リップ・コーズの大半の曲はテリー・メルチャーとブルース・ジョンストンを中心に作り上げたもので、バッキングはハル・ブレイン、レオン・ラッセル、グレン・キャンベルなど腕利きのスタジオ・ミュージシャンが担当している。サーフィン&ホット・ロッド系のヴォーカルものはブライアン・ウィルソンかスローン=ヴァリがからまないと往々にしてなんともチャチなものになるが、このブルース&テリ?も彼らと並んで安心出来る実力派のミュージシャンなので、十分な出来だ。なにしろ演奏とコーラスがしっかり構築されている。それぞれシングル・オンリーの曲などボーナス・トラックが3曲ずつ入り、タイトル的にはブルース&テリ?の全音源が収録されたが、1曲だけ別ヴァージョンがあった。それは映画「A Swingin' Summer」のサントラに収録されていた "Red Hot Roadster" で、解説では疑似歓声や手拍子を除いたステレオ・ヴァージョンとあるが、これは歌のメロディ自体が違う完全な別テイクである。どちらもお持ちの方は是非聴き比べていただきたい。(佐野)
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