今回の最高のリイシューはなんといってもこのサンレイズのコンプリート3枚組 CD ボックスである。
まずディスク1はサンレイズの原型のRenegades、Snow Men、Rangersなどの名義でリリースされたインスト中心の初期楽曲集、ディスク2はサンレイズの唯一のアルバム「Andrea」を含む多数のシングル・オンリー曲も網羅した公式音源集(1曲未発表デモ含む)、そしてディスク3はサンレイズでの未発表10曲を含む未発表デモ集という、驚異的なボックス・セットが実現した。
なんといってもディスク2、3が華だ。
今まで一部で言われてきた「サンレイズはビーチ・ボーイズのクローン・バンド」という見方がいかに誤っているかよく分かるはず。
サンレイズにはリック・ヘン、そしてエディ・マドーラという作曲が出来るメンバーがいてそれぞれ素晴らしいオリジナル・ナンバーを書いていたこと、マレー・ウィルソンが雇ったアレンジャー、Hial Kingも優れた曲を書き、またHialともう一人のアレンジャー、Don Ralkeはサンレイズのサウンドにホーンやストリングスを的確に加え、ビートがあってポップなサンレイズのサウンドを完成させていた。そしてこのボックスに収録されていたデモの質の高さはまさに驚異的で、デモの域をはるかに超え、正式にリリースされた曲より出来がいいものが多い。
特にリック作の2曲、デモの "Goognight Debbie,Goodnight" とサンレイズがクリスマスにマレーへプレゼントした曲 "Our Leader" は、ファルセットのヴォーカルを存分に使った美しいメロディ・ライン、厚いハーモニーとも完璧な出来で、特に後者はどうしてこんなもったいない使い方をしたのか謎としかいいようがない。
また完成度が高く「Andrea」の雰囲気にピッタリなエディ作
"I Wanna Know" とHial作の "I Was A Loser" や、ビーチ・ボーイズにも一歩もひけをとらない華麗なアカペラ "I'm On My Way" も聴きもの。
どれをシングル・カットしても十分な出来だ。
またこれはサンレイズではないが、マレーがビーチ・ボーイズの為に書き、リックがデモを作った "Won't You Tell Me" は、このボックスのハイライトとなる実に美しい曲で、言われるようにマレーは決して無能ではなかったことがこの1曲で分かる。
サーフィン&ホットロッド系のグループで洗練されたサウンドを聴かせてくれるのは、ブライアン・ウィルソンのビーチ・ボーイズ、スローン=ヴァリのファンタスティック・バギースくらいで、ゲイリー・アッシャー関係やジャン&ディーンはどうにもあか抜けないため、いわゆる「当たり」が少ないのだが、このリック・ヘン、エディ・マドーラのいたサンレイズも最高レベルのグループで、存分にリスナーを満足させてくれるだろう。
サンレイズ以降リックはDon Ralkeのプロデュースでトロピカルな "So Lonely" (Philips/42370)や、極上の美しいバラード "Girl On The Beach" (Epic/11036。もちろんリックのオリジナル)といった優れたシングルを残し、エディはヘヴン・バウンド(「ソフト・ロック追補」のコーナー参照)の実質的なメンバーとして、素晴らしいハーモニーを聴かせてくれた。
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